【感想】 探偵はもう、死んでいる 1話 作画凄いし初回1時間で力入れているだけはある シエスタちゃん可愛い

CA「お客様の中に探偵はいらっしゃいませんか？」

君塚「聞き間違いだろうな」

君塚「上空およそ1万2千メートルの高さを飛ぶ旅客機の中で聞くセリフではない」

君塚「だから俺も聞き間違いで勘違い….そうあってほしい」

君塚「どうにも昔から俺は厄介なことに巻き込まれる、巻き込まれ体質とでもいうのだろうか」

君塚「大通りを歩けばフラッシュモブに撮影されるし」

君塚「裏道をいけば白い粉の取引現場に遭遇する」

君塚「殺人現場にいすぎて」

君塚「顔馴染みの警官に疑われるし」

君塚「それに今日だって…」

君塚「俺はやたらでかい中身のわからないアタッシュケースを持たされて」

君塚「俺は海外に飛んでいる」

君塚「意味がわからないし理不尽だ」

君塚「そもそもこういう状況で求められる役割は医者か看護師だろ」

君塚「それが探偵って…」

CA「お客様の中で探偵の方はいらっしゃいませんか？」

君塚（聞き間違いじゃないか…？）

君塚（いや、問題はない…そもそも俺は探偵じゃないし）

？？「はい」

？？「私は探偵です」

君塚「なあ、あんた名前は？」

君塚「いきなり何をきいているんだ俺は」

？？「私の助手になってよ」

君塚「は？」

？？「私は探偵…こっちは助手です」

君塚「は？」

CA「こちらです！」

君塚「おい、これは一体…？」

シエスタ「シエスタ」

君塚「シエスタ？」

シエスタ「それが私の名前」

君塚「変わった名前だな」

シエスタ「コードネーム、あるでしょ？普通？」

君塚「ないだろ普通…」

シエスタ「君の名前は？」

君塚「君塚君彦」

シエスタ「そう、じゃあ君って呼ぶから」

君塚「それってあだ名か？それともただの二人称？」

シエスタ「どっちだと思う？」

CA「探偵様とその助手の方をお連れしました」

？？「ほう…本当にいたのか探偵が」

？？「予想以上に若いのが来たが」

？？「どっちが探偵だ？」

君塚（想定しうる最悪の状況….）

シエスタ「そんなことよりまずあなたの名前は？」

シエスタ「ほら！」

シエスタ「やっぱりみんなあるでしょコードネーム」

君塚「いや知らねえわ！今絶対そんな場面ではない！」

シエスタ「私はシエスタ、こっちは助手のワトソン、ベーカー街で一緒に生まれ育ったの」

シエスタ「それで」

シエスタ「コウモリ、あなたの目的は？どうして私を…名探偵をここに呼んだの？」

コウモリ「はっ！おもしれえ女だ」

コウモリ「よし、じゃあ俺が飛行機を乗っ取った理由を推理してみろ！見事正解したら機長の首をへし折るのをやめてやる」

君塚「はぁ？」

シエスタ「それを推理させるためだけに私達を呼んだの？」

コウモリ「ああ、その通りだ！ゲームだゲーム…乗客600人を賭けたデスゲーム、ワクワクするだろ？」

コウモリ「お前らの勝利条件は俺がハイジャックをした理由を当てること」

シエスタ「成功すれば全員の命は助かり、失敗したら死ぬと…？」

コウモリ「ああ、シンプルなルールだろ？」

シエスタ「そうね、だけど私達が失敗した場合貴方も同じ運命を辿ることになるけど」

シエスタ「自分の命は惜しく無いわけ？」

コウモリ「こうでもしなきゃ生きてる実感が味わえないってとこかな」

シエスタ「そう、随分と暇人なのね」

コウモリ「ああ、暇さ！暇が昂じてうっかりとハイジャックしちゃうくらいさ！」

シエスタ「はい、じゃあそれが答え」

シエスタ「あなたは暇で暇で仕方ないから飛行機を乗っ取った」

シエスタ「ファイナルアンサー」

君塚「ちょっと待てそれ本気で言ってるのか？その答えに乗客すべての命がかかってるんだぞ」

シエスタ「だって」

シエスタ「だって、あの男言ったじゃない？暇だから、暇が昂じてって」

君塚「確かにそういったがそれはただの軽口みたいなものだろ？」

シエスタ「へえ？じゃあこの男は嘘をついてたってことなの？」

シエスタ「名探偵に恐れをなしてつい口が滑っていってしまったそれを嘘だとごまかして」

シエスタ「むりやり私の負けにしてゲームを終わらせようとしてると」

シエスタ「つまりは、ビビっていると」

シエスタ「そういうこと？」

コウモリ「ふ…」

コウモリ「アハハハハ！！」

コウモリ「凄い！凄いよ！」

コウモリ「いや、見事！実に見事だった！」

コウモリ「まさかな、こんな形で言いくるめられるとは」

コウモリ「思った以上にあっけない結果だったがまあいいさ」

コウモリ「目的は既に果たした、ここらで引いておこう」

コウモリ「心配するな、あれも意識を失っているだけで死んじゃいない」

コウモリ「まあ、空港に着いたら俺は捕まるだろうが誰も殺しちゃいないしな」

コウモリ「暫く別荘暮らしでもすればすぐに出てこれるだろう」

シエスタ「ああ、本当に嘘つきだったんだ」

コウモリ「なんのことだ？」

シエスタ「いや、べつに」

コウモリ「あのな…探偵さんよ」

コウモリ「そうだよ、この飛行機を乗っ取ろうとした理由は他にあるさ！だが、あんたの豪胆さに免じて負けたフリをしてるだけじゃねえか」

コウモリ「ったく、2度も言わせんじゃねえよ」

君塚「そうだよ、コウモリの大人な対応を見習って僕たちもそろそろ元の場所に」

シエスタ「いや、私の言ってる嘘ってのはそのことじゃなくて」

シエスタ「ハイジャックに自分の命をかけるってアレ嘘だったんでしょ」

シエスタ「本当は死ぬのが怖かったんでしょ？」

コウモリ「何を言ってる？」

シエスタ「引くのが早すぎたのよ…私に負けを認めて引くのが」

シエスタ「このご時世にハイジャックしようとする男が、女子供相手にそう易々と引きさがるわけがない」

シエスタ「おそらく貴方は誰かの指示でこの飛行機をハイジャックするように命じられている」

シエスタ「そして、あなた自身もこの飛行機とともに死ぬことを命じられている」

シエスタ「でも、あなたは本当は死ぬのが怖いから死なずに済む理由付けに私達を使ったんでしょ？」

君塚「でも、それならなんでわざわざ推理ゲームのような真似を？」

君塚「ハイジャックをやりたくなったのなら、大人しく人を殺してもよかったのでは？」

シエスタ「プライドが許さなかったのでしょう」

シエスタ「不戦敗じゃなくてちゃんと戦って負けたかったのでしょう…形だけでも」

君塚「そういうものなのか？」

君塚「って、おい！」

君塚「急にどこ行くんだよ」

シエスタ「用事も済んだみたいだから戻ろうかと」

君塚「だからって勝手に置き去りにするな」

シエスタ「言わなくても勝手についてくるとおもってた」

コウモリ「なあ」

コウモリ「最後に1つ聞かせろ」

コウモリ「どうして全部わかった？」

コウモリ「何をヒントにそんな推理を？本当に俺が身を引くのが早すぎたからってそれだけで…」

シエスタ「それもあるけど…最初からあなたのこと知ってたから」

君塚「は？」

シエスタ「あなたが今日この飛行機に乗ることも、ハイジャックを企てていることも」

シエスタ「それからついでに、それを命じたあなたのお仲間たちのことも全部」

シエスタ「一流の探偵っていうのは」

シエスタ「事件が起きる前に事件を解決しておくものだから」

コウモリ「そういうことだったか…」

コウモリ「やっぱり念のため最後に聞いておいてよかった」

シエスタ「助手！伏せて！」

君塚「おい！何やって…！」

コウモリ「悪いな…やっぱり予定変更だ」

コウモリ「1つ教えといてやろう、一流のエージェントってのはな」

コウモリ「若い目を見つけたら刈り取っておくものなのさ」

君塚「おい….！」

シエスタ「助手なんて雇うんじゃなかった…ここまでなんも役に立ってないし」

君塚「理不尽だな…！勝手に雇ったのはお前だろうが！まあ、役に立ってないのは同感だが」

シエスタ「助手なんて雇うんじゃなかった…ここまでなんも役に立ってないし」

君塚「なんだよあれ….」

シエスタ「人造人間だよ」

君塚「は？」

シエスタ「あの男は秘密組織スペースの工作員」

君塚「スペース？」

シエスタ「スペースは人智を超えた力で人造人間を生み出し裏から世界を脅かしている」

シエスタ「あの男はまだ耳だけだけど、試作品を取り出して無理やり耳に取り付けたに過ぎない」

シエスタ「いわば、半人造人間」

君塚「どうしてお前がそんなことまで？」

シエスタ「そして組織を裏切った罰として彼には今回のペナルティをくらったってわけ」

君塚「だから、どうしてお前がそんなことまで！」

君塚「まさかお前も…？」

コウモリ「そうか、そこまで知ってるか」

コウモリ「だったらやはり、お前の死体を手土産に持っていくのが得策みたいだな」

シエスタ「助手！」

君塚「まさかお前も人造人間なのか？」

シエスタ「馬鹿か君は」

シエスタ「私が化け物に見える？」

君塚「化け物じみているとは思っている」

シエスタ「君、絶対もてないでしょ」

CA「落ち着いて！焦らずこちらに避難をお願い致します！」

コウモリ「ああ、阿鼻叫喚だな…こうなりゃ自棄だ余計な人間を全員殺してやる」

君塚「早まるな！そんなことをしたら飛行機は墜落してお前まで死ぬぞ？」

コウモリ「パイロットだけは生かしておくさ！というかお前は誰だ」

君塚「名探偵の助手だよ！」

シエスタ「へぇ….」

君塚「違う！今のはついうっかり！」

シエスタ「私を名探偵と呼んでくれるのか…できた助手だ」

シエスタ「助手！」

君塚「うおおおおおお！！？」

君塚「一体何なんだよ」

シエスタ「本当に何も知らないんだね」

君塚「善良な中学生が裏世界の事情なんて知るわけないだろ」

シエスタ「謎のアタッシュケースを手に海外に渡ってる中学生が何か言った？」

君塚「だからほんと…どこまで知ってるんだよ」

君塚「うわ！？」

コウモリ「まさかこんなところに俺たちの脅威となるやつが潜んでいるとはな」

シエスタ「探偵たるもの隠密行動は基本だもの、現に私の存在に気づいているお仲間はいなかったでしょ？」

コウモリ「だからこそ、お前の情報を集めれば短気なあいつらも気を改めると期待しているのだが」

シエスタ「そんな甘い連中かしら？」

コウモリ「知った口を！」

君塚「おいおい、機体に穴でも開いたらどうすんだ」

君塚「なっ！？」

コウモリ「ずいぶんと息が上がっているようだな」

コウモリ「この耳は特注品では、触角の先端に集まった細胞は100キロ先にいる人間の心臓すら聞き分けてくれるのさ」

コウモリ「隠れても無駄だ」

シエスタ「情報が足りなかった…流石に心拍数まではごまかせないか」

シエスタ「せめて武器があれば…」

君塚「シエスタ…」

君塚「30秒稼いでくれ…」

君塚「俺に考えがある」

シエスタ「….わかった」

シエスタ「はっ！」

コウモリ「ぐあ！！」

君塚「どけどけ！どいてくれ！」

君塚「こんな時でも頭は働く」

君塚「生まれながらの巻き込まれ体質」

君塚「くぐり抜けた修羅場の数なら食べたパンの枚数より多い！」

コウモリ「そろそろ観念したらどうだ名探偵」

君塚「シエスタ！！」

君塚「俺はあの箱の中身が何なのかは知らない…だけど」

君塚「この直感は過去の経験に裏打ちされた最適解だ」

君塚「受け取れ！」

シエスタ「助手….」

シエスタ「最高の仕事だよ」

コウモリ「まだ事件は終わってないぞ！名探偵！」

シエスタ「そうね…でも」

シエスタ「私がいる時点で既に解決したとも言えるかな」

コウモリ「ぐあああああ！」

コウモリ「あああああ！」

シエスタ「パン」

シエスタ「はい、今ここであなたは死にました」

シエスタ「これであなたがお仲間に狙われることはなくなった、あなたはもうただの死人なんだから」

コウモリ「てめえ…舐めてんのか？」

シエスタ「だって死にたくないんでしょ？」

シエスタ「表向きは貴方はここで死んだことにして日本の警察に匿ってもらう、大丈夫、信頼できるつてがあるの」

コウモリ「ここで俺を殺しておかないと後悔するぞ」

シエスタ「どうして？」

君塚「シエスタ！！」

シエスタ「さっきあなたに打ち込んだ弾丸は私の血で作られていてね」

シエスタ「その弾丸を浴びたものは決してマスターに逆らうことができなくなる」

シエスタ「つまりは、貴方の触手は二度と私に攻撃することはできない」

コウモリ「どんな仕掛けだよ…まったく…」

コウモリ「お前も誰かのまとわりか？」

シエスタ「いいえ？」

シエスタ「私は生まれつき名探偵体質なの」

君塚「ところでシエスタ」

君塚「銃の弾に施した特殊な細工なのだが」

君塚「そんなことする時間一体どこにあったんだ？」

シエスタ「馬鹿か？君は」

シエスタ「そんなものあるわけないじゃない、あれは予め準備しておいたものだよ」

君塚「予めって….まさか！？」

シエスタ「うん、あのアタッシュケースを君に運ばせる指示をしたのは私だよ」

君塚「つまり、俺は最初からお前の手の中だっただと」

シエスタ「恨むなら私の手の中から逃げなかった自分を恨むんだね」

君塚「そういえば…なんで俺に？」

君塚「って….」

君塚「シエスタ….」

君塚「疲れた…」

君塚「結局、一体何だったんだ」

君塚「いやいや、これ以上巻き込まれてたまるか！」

シエスタ「おかえり」

シエスタ「君、遅かったわね」

君塚「はあああああ！？」

君塚「何度も言っているが」

君塚「断る」

シエスタ「え？何？」

君塚「聞こえてないフリはやめろ」

君塚「お前の助手になんかなるもんか」

君塚「って言ってるんだ」

シエスタ「よく聞こえない」

君塚「おい！」

シエスタ「まあ、少し落ち着きなよ」

シエスタ「背中でも流してあげようか？」

君塚「結構だ」

シエスタ「バスタオルだけ巻いて入ろうかなと」

君塚「….結構だ」

シエスタ「物凄くわかりやすい間があったね」

君塚「くそ、思春期の男子になんていう罠をしかけるんだあいつ」

君塚「それよりもだ！この1週間ずっと、ずーっと言ってるだろ」

君塚「勝手に人の家に上がり込んでくるな」

君塚「風呂にまで入ってこようとするな！」

シエスタ「だってそれは君が私の話を聞き入れようとしないから」

君塚「聞き入れられる話か？」

シエスタ「ただ私の助手として世界を飛び回るのに付き合ってほしいだけなんだけど？」

君塚「そんなでたらめな申し出は断る一択だろ」

シエスタ「ふう、君も強情だな…こうして君の家に侵入するのも楽じゃないんだからね」

君塚「え？なんでそんなに偉そうにできるの？俺が悪いの？鍵はちゃんとかけてたはずなんだが」

シエスタ「ああ、それならマスターキーであけさせてもらったよ」

シエスタ「私の七つ道具の一つでね、この鍵に開けられない鍵はないんだ」

君塚「めっちゃ楽して不法侵入してんじゃねえか！」

シエスタ「それは辛亥だね」

君塚「プライバシーの侵害をしているやつよりましだ」

シエスタ「それで、どうして私の助手になるのがそんなに嫌なわけ？」

君塚「前にも話しただろ、俺はこの巻き込まれ体質のせいで損ばかりしてきたんだ」

君塚「だから俺の夢はただ平和にぬるま湯に浸かったような生活を送ることなんだよ」

シエスタ「私と一緒じゃそんな生活は送れないって？」

君塚「そりゃあ….」

君塚「あんなのにかかわっていたら命がいくつあっても足りない」

シエスタ「でも私にしかやれないんだよこの仕事は」

君塚「そのお前にしかやれないことに俺を巻き込む意味は？」

シエスタ「それは….あっ、そうだ」

君塚「今思いついたことを言おうとしてないか？」

シエスタ「実は君に一目惚れで」

君塚「いやいや、一回待ち合わせした時に俺の顔にピンと来てないことあったよな」

シエスタ「君は2日会わないと忘れる顔をしているからね、隠密行動にはぴったりだよ」

君塚「褒めているフリをして貶すのをやめろ、そして早速助手としての仕事を割り振るな」

シエスタ「本当に助手…やってくれないの？」

君塚「なんでちょっと落ち込むんだよ」

君塚「というか、交渉をするならまずメリットを提示しろ」

シエスタ「案外優しいんだね君は」

君塚「過大評価だな」

シエスタ「そういえば、さっきピザの出前頼んだけどよかった？」

君塚「早速人の優しさにつけこむな！今週5回目だぞ今すぐキャンセルの電話をかけろ」

シエスタ「これは私の予想なんだけど多分1年後もこういう感じで私達上手くやってる気がする」

君塚「絶賛上手くいってないな！俺だけずっと気負っているな！」

シエスタ「というわけで」

シエスタ「話してみなよ？」

君塚「いや、俺じゃなくてお前が俺にメリットを提示する流れだっただろ」

シエスタ「なにか悩みがあるんでしょ？」

シエスタ「それらを解決してあげることが私が君にあげるメリットだよ」

君塚「俺のトラブルを解決してあげる代わりに自分の助手になれと？」

シエスタ「そういったかもね」

君塚「それよりも…」

君塚「見たんだったら見たなりのリアクションを取って貰えるか？」

シエスタ「ああ」

シエスタ「ピザが時間通りデリバリーされるかどうかほど気にはならないかな」

君塚「実は今うちの学校でトイレの花子さんが大量発生しているらしくてな」

シエスタ「なるほど、トイレの花子さん」

君塚「ああ」

シエスタ「誰もが一度は聞いたことがある学校の七不思議だね」

シエスタ「午前三時に」

シエスタ「旧校舎の手前から三番目の女子トイレを3回ノックすると」

シエスタ「個室から赤い吊りスカートの少女が現れて」

シエスタ「便器の中に引きづりこまれる」

シエスタ「本来であれば今更取り上げるに値しない時代遅れの都市伝説…」

シエスタ「けど、君の学校では少し事情が違う？」

君塚「おう….」

君塚「なあシエスタ」

君塚「知り合ったばかりの男の家で、知り合ったばかりの男の部屋着を着て」

君塚「ピザを食べながら海外ドラマ雑誌をチェックするな、同棲中の彼女かお前は…」

シエスタ「え？違うけど？」

君塚「違うから文句を言ってんだ」

シエスタ「それで、花子の話だけど」

君塚「だが”さん”をつけろ、花子さんを友達みたいに言うな」

シエスタ「つまり君の中学ではその花子さんが増殖していると」

君塚「ああ」

君塚「なんでも花子さんに会った生徒は自分も花子さんになってしまうらしい」

シエスタ「なるほど、ゾンビに噛まれた人間がゾンビになるみたいな」

シエスタ「あっ….」

シエスタ「だけどそれが単なる噂話じゃないから君はこうして私に相談しているんでしょ？」

君塚「まあ、そういうことになるな」

君塚「今、うちの中学では陸上部を中心に不登校の学生が急増している」

君塚「中には不登校どころか家出しているやつもいるそうだ」

シエスタ「その原因が花子さんだと噂されているんだ」

シエスタ「いなくなった生徒は女子トイレに引きづりこまれたんじゃないかと？」

君塚「ああ、しかもその数が加速度的に増えていることから花子さん自体が増加しているんじゃないかなってな」

シエスタ「それで、花子さん大量発生」

シエスタ「君は優しいんだね」

君塚「ピザ代は後で貰うが」

シエスタ「そっちじゃなくて…まあ、ピザ代は払わないけど」

君塚「いや、払えよ」

シエスタ「学校からいなくなったっていう生徒は当然君の友人じゃないんでしょ」

シエスタ「なのに心配してこうやって解決しようとしている」

君塚「まるで俺に友人がいないことが当たり前みたいに言うな」

シエスタ「君の言う巻き込まれ体質ってやつなのかな？同時に君には人助け体質も沁みついてるんだよ」

君塚「そりゃまたいらないDNAだな」

君塚「でもまあ、自分の目が届く範囲は平和な日常ってやつを守りたいだろ」

君塚「物心つく前に両親が蒸発、色んな家や施設を転々としながら」

君塚「今はこの年にしてこの家で1人暮らし」

君塚「そりゃ平和で平凡で安定した環境ってのを」

君塚「求めたくもなるだろ」

シエスタ「なるほどそれが君の…うん、全部わかった」

君塚「今の会話で全部わかられるの怖すぎるんだが」

シエスタ「家族も友達もいないんじゃ寂しいよね」

君塚「だから友達がいないって一度でもいったか俺」

シエスタ「ということで」

シエスタ「週末2人でこれに行こう」

君塚「文化祭？いや、花子さんの話はどこいった？」

君塚「マジで…？いつの間に…？」

君塚「文化祭なんだ？いや、待てよ準備にかかわった記憶が一度もない」

君塚「文化祭といえばクラスで一致団結して」

君塚「出し物を準備するものじゃなかったか？」

君塚「トラブル続きで学校に通えていない間に全部終わってた？」

君塚「なんでそんなの誰も教えてくれないんだ？」

シエスタ「お待たせ」

君塚「シエスタ…お前その格好？」

シエスタ「ああ、普段と違う格好だからね」

シエスタ「ついでにリボンとかつけてみた」

シエスタ「どう？」

シエスタ「どうして急に後ろを向くの？」

君塚（これは気を付けてないとうっかり可愛いと漏らしてしまう気が…）

君塚（しかしそれは負けを認めているような気がして言いたくない）

君塚「なんでうちの制服着てるんだよ」

シエスタ「ああ制服を着ている理由？」

シエスタ「だって文化祭で制服デートって楽しそうじゃない」

君塚（可愛いな….悪くない）

シエスタ「どうして空を見上げているの？」

君塚「さあ、どこから回る？」

シエスタ「出店にプラネタリウム…」

シエスタ「ふーん、お化け屋敷は旧校舎か…ここはマストだね」

君塚「ああ…でもスケジュールを見て行動しないとな」

シエスタ「ねえ！」

シエスタ「このお化け屋敷って時間外は受け付けてないの？」

君塚「おいシエスタ、書いてあるだろ昼休憩の時間は入れないって」

シエスタ「でも私が脳内で描いた最適経路によるとこの時間に行くのがベストなんだよね」

シエスタ「まずは腹ごしらえしたいし、1時間デカ盛りチャレンジとか」

君塚「中学生が文化祭でやる企画じゃないんだよな」

シエスタ「というわけで」

シエスタ「時間外だけどよろしくね？」

シエスタ「助手！私クレープ食べたい！」

君塚「おい！！」

生徒「お待たせしました～」

君塚「あのな、シエスタ….」

君塚「俺以外にあんな理不尽を突き付けるのは良くないぞ」

シエスタ「何も言ってないのに買ってきてくれた…この前私がピザを取った時は怒ってたのにどうしたの」

君塚「事態は刻一刻と変化するものだからな」

君塚「居もしないトイレの花子さんより今は文化祭なんだよ」

君塚「時代は青春ラブコメだ！！」

シエスタ「え？なに？」

シエスタ「意味はデート＝私が彼女になるみたいな話だと思ってた？」

君塚「いや…全く？1ミリも？これっぽっちも？」

君塚「思って….なかった…」

シエスタ「馬鹿か君は」

シエスタ「次はたこ焼き買いにいくよ！」

君塚（この距離感が色々間違わせるんだよな）

君塚「旧校舎3階の手前から3番目っていう完全に花子さんが出る」

君塚「トイレの個室内に2人で入ってるわけだが」

君塚「これはどういう展開だ？」

シエスタ「ちょっと調べたいことがあってね」

シエスタ「私の考え通りなら」

シエスタ「あった！」

シエスタ「なんだと思うこれ」

君塚「なんだろう風邪薬の袋とか？ここで飯を食った後にそれを飲み込んだみたいだな」

シエスタ「真っ先にその案が浮かぶ君に同情の念を吟じえないんだけど」

シエスタ「まさか君が守りたい平和な日常ってトイレで1人お弁当を食べることだったりする？」

君塚「いった通り両親は現在進行形で行方不明だから弁当なんて作って貰ったことはないな」

君塚「便所で食う昼飯は菓子パンに限る」

シエスタ「さすがに君のことが可哀想になってきたね、たまにお弁当作ってあげようか？」

君塚「だから、そんな誤解を招くような言い方を…」

シエスタ「静かに！」

君塚「なっ！？」

君塚「あんたは確か校内でビラ配りをしてた」

君塚「でも、なんでこんな場所に？」

シエスタ「逃がさないよ」

君塚「おいシエスタ？」

シエスタ「あのうさぎこそがトイレの花子さんだよ」

君塚「うわ…」

君塚「これは…」

シエスタ「木を隠すなら森の中ってね」

君塚「で、あの着ぐるみが花子さんってどういうことだ？」

シエスタ「説明はあと、まずはあのうさぎを探さないと」

君塚「といってるそばから悪いが」

君塚「あれじゃないか？」

君塚「堂々としてればバレないものの…さあ、捕まえに行くぞ！」

シエスタ「流れに沿ってやる気を出すその感じ、とてもいいよ伸ばしていこう」

君塚「伸ばしていこうってなんだ勝手に助手育成プロジェクトを立ち上げるな誰目線なんだ」

生徒「衣服部です！コスチュームの無料試着体験やってます！」

生徒「お時間のある方、ぜひいらしてください！」

君塚「時間があればシエスタの猫耳メイド姿を拝んでやるところだったが」

君塚「生憎その時間はないか…」

シエスタ「2名でお願いします」

君塚「ってあるのかよ！いやないだろ！また逃げられるぞ！」

シエスタ「これも作戦だよ」

シエスタ「相手が着ぐるみの山の中に逃げ込もうとするなら」

シエスタ「私達もコスプレで姿を変えるっていう戦法！」

君塚「そんなにうまくいくか？」

君塚「猫耳メイドといったら余計目立つ気がするが」

シエスタ「まあまあ、いいから」

シエスタ「っていうかなんで私は猫耳メイド前提なの」

シエスタ「着ないよ」

君塚「うーん…これは…」

生徒「きゃー！可愛い！凄く似合ってます！」

シエスタ「助手..」

シエスタ「どう？」

君塚「ああ…まあ、似合ってるな…」

シエスタ「素直に言われると思わなかった」

君塚「嘘をついても仕方ないからな」

シエスタ「でも、君も似合ってるよ」

シエスタ「そのタキシード姿」

シエスタ「そ、そうか…？」

生徒「良かったら写真撮りますよ？」

君塚「じゃあ….まあ」

シエスタ「せっかくなら」

生徒「いきますよ～はいチーズ！」

君塚「じゃなくて！俺らうさぎを追ってる途中！」

シエスタ「うっかりラブコメに尺を使いすぎたね」

シエスタ「これ走りにくいね」

君塚「同感だ」

君塚「コスプレイベントとでも思ってるんだろうな」

シエスタ「ねえ、楽しいね！助手！」

君塚「って誰が助手だ！」

シエスタ「あ、ばれた？」

シエスタ「助手、あれ」

君塚「外に逃げる気か？」

君塚「ちょっと待て、嫌な予感がするのだが」

君塚「まさかとは思うがお前ここから飛ぶつもりじゃないよな？」

シエスタ「うん、違うよ」

君塚「そうか、さすがに違ったか」

シエスタ「私だけじゃなくて君も一緒にね」

シエスタ「大丈夫、私が今履いてる靴は名探偵の七つ道具のうちの1つでね」

シエスタ「空を飛べるんだ」

シエスタ「これが不登校になった人達が接種していた薬」

シエスタ「使うと一時的に気分が高揚したり集中力が増したりすることで」

シエスタ「陸上部の生徒を中心に広がっていたみたいだね」

君塚「全然知らなかったな」

シエスタ「でも、副作用で記憶障害が引き起こされる可能性があってね」

君塚「その薬を使っていた生徒は学校を休んでいると」

シエスタ「薬に依存した生徒は薬を得るために薬を売る側に回る」

シエスタ「そうやって加速度的に花子さんが増殖していったんだと思う」

君塚「その闇取引を隠語のように表していたのがトイレの花子の噂話」

シエスタ「実際その違法薬物は」

シエスタ「ある植物から出る花粉のようなものをベースに作られているらしいよ」

君塚「花粉…なるほどそれで花子さんかくだらないジョークだな」

君塚「でも花子さんは午前三時にしか現れないんじゃなかったのか？なんでまた昼間の文化祭なんかに」

シエスタ「人ゴミに紛れられ」

シエスタ「着ぐるみで正体を隠せる文化祭なら」

シエスタ「ライバルを出し抜いて薬を布教できると踏んだんだよ」

君塚「なるほど…なあ、シエスタは最初からあのうさぎが怪しいと気づいていたんだよな？」

シエスタ「花子さんのオークは陸上部だったって話でしょ？」

シエスタ「わざわざランニングシューズを履いている着ぐるみなんて」

シエスタ「自分で正体を明かしてるようなものだからね」

君塚「今思えば」

君塚「シエスタは初めから」

君塚「客のフリをして隠語を使いコッソリ花子さんにコンタクトを取っていたんだ」

シエスタ「言ったでしょ？一流の探偵ってものは事件が起きる前に事件を解決しておくものだから」

君塚「まあ、お前にとっちゃ大して難しい事件ではなかったか」

シエスタ「だけど」

シエスタ「今回のあのお花にはどうやらスペースが絡んでいるっていう話があってね」

君塚「それって例の秘密組織か？」

君塚「ハイジャックとか学生に隠れて犯罪行為とか一体なんの目的があって？」

シエスタ「スペースとはラテン語で希望という意味、彼らの目的は救済を与えることなんだよ」

君塚「まるで胡散臭い宗教だな」

シエスタ「それで？君はこれからどうする？」

君塚（なんでもいい毎日があればとのたまっていた俺は何も気づいていなかった）

君塚（平和な日常は既に強烈な毒に侵されて）

君塚（どこにも存在していなかったことに）

君塚「シエスタ」

君塚「もう一度聞くがお前の助手になることで俺にはどんな利点がある？」

君塚「俺にどんなメリットをもたらしてくれる？」

君塚「何故お前が俺を助手にしたがるのか…それは偏にこの巻き込まれ体質が理由だ」

君塚「事件を…スペースを追っているお前としては俺はとっておきの人材」

君塚「名探偵は俺ではなく事件をご志望ということなんだ」

君塚「だから、俺に提示できるメリットなんて急ごしらえの適当なことしかあるはずがない」

君塚「俺の気持ちは固まっている..シエスタがなんて言おうと断るそれ一択だ」

シエスタ「私が君を守る」

シエスタ「その体質のせいでどんな事件やトラブルに巻き込まれようと私がこの身を呈して守ってあげる」

シエスタ「だから、君私の助手になってよ」

君塚「何を上手いこと言いくるめようとしてんだよ」

君塚（そんな取り繕っただけの提案なんて…）

君塚「そこまで言うなら付き合ってやらんでもないが」

シエスタ「というか」

シエスタ「ここに来てる時点でもう答えは出てたよね」

君塚「大体、一口に助手といっても定義が曖昧っていうかな」

シエスタ「毎朝私を起こして歯を磨いて服を着替えさせたりとか」

君塚「….そんなのお断りだ」

シエスタ「凄く間があったけど？ちょっとその生活いいなって思わなかった？」

君塚「ああ、うるせえわかったよ望み通りお前の助手になってやる！」

君塚「だから一生一緒にいてくれ！」

シエスタ「え…？それってプロポーズ…？」

君塚「前言撤回！」

君塚（こうして俺とシエスタの目もくらむような冒険談が始まった）

君塚（そして俺たちは死に別れた）

君塚（探偵はもう死んでいる）