【感想】 探偵はもう、死んでいる 10話 シエスタの心臓奪われてから夏凪に移植された経緯が気になる

渚「君塚に貰った新しい人生は名探偵として始まった」

渚「それも普通の探偵ではない」

渚「人造人間と戦う探偵だ」

渚「そんな名探偵として新しい自分に生まれ変わる決意をした」

渚「その日の晩、私は夢をみた」

渚「それはかつて本物の名探偵として世界の敵と戦ってきた夢だった」

渚「夢の中の彼女は」

渚「シエスタさんは私とは正反対の性格に思えた」

渚「理知的な彼女と直感型の彼女は」

渚「夢の中で大ゲンカ」

渚「それはそれは見るに堪えない泥沼劇だった」

渚「だけど」

渚「最後に勝ったのは私で」

渚「いや、シエスタさんの方が大人で」

渚「自ら引いてくれたような気もするけど…」

渚「ん？」

渚「でも最終的にシエスタさんは君塚を私に任せると言ってくれた」

渚「これで私は名実ともに名探偵になれる…やっと何者かになれる」

渚「逆に言えば失敗は許されない」

渚「何者でもない自分は嫌だ」

渚「もうあの鳥かごのような場所には、何もなかった場所には戻りたくない」

渚「あの暗闇だけは…」

渚「もう…」

君塚（あの斉川のドームライブから1週間学校は夏季休暇に入っていた、夏凪たちとの約束を果たすにはうってつけの機会である）

君塚（とりあえず近場の海でも…と思っていたのだが）

唯「それじゃあ、エーゲ海に向けて出発進行です」

唯「えいえい」

唯「おー！」

君塚「スケールがでかすぎる！！」

君塚「あのな斉川、確かに一緒に海に行こうとは言ったが」

君塚「それがどうして8日間の船の旅になるんだ？」

唯「まあまあ、船は出港しちゃったんですから切り替えていきましょうよ」

渚「ほんとほんと」

渚「優柔不断な男は嫌われるから」

渚「でも、私もこういうの初めてだから結構楽しみなんだよね、ありがとう唯ちゃん」

唯「いえいえ、渚さん…せめてもの償いです」

君塚「俺たちと一緒にスペースと戦ってくれる…それをやってくれれば文句はない」

唯「はい！もちろんです！」

君塚「まあ、何事も起きないのが一番なんだけどな」

シャル「君塚…！？」

君塚「シャル…！」

君塚「1年ぶりか」

シャル「ええ、あの日以来ね」

渚「君塚、知り合いなの？」

君塚「ああ、シャルは俺の…俺たちの昔の仲間だ」

シャル「今さら再会するとは思わなかったよ」

君塚「ああ、俺もだよ元気にしてたか？」

シャル「その様子だとあなた偶然この船に乗ってるみたいだね」

君塚「この船に何かあるのか？」

シャル「ほんと…あなたは一体今まで何をやってたわけ？」

君塚「いままで？」

シャル「マアムが亡くなってからよ」

シャル「君塚、あなたはマアムの仕事を引き継ごうという気はなかったの？」

渚「その意志なら私が継いだから」

シャル「あなたは…？」

渚「私は夏凪渚…名探偵よ」

シャル「夏凪渚…？」

シャル「ああ、貴方が…」

シャル「探偵ごっこならよそでやってくれるかしら？」

シャル「マアムの命を使ったおままごと私の前で見せないで」

渚「ごっこ遊びなんかじゃない！」

渚「この命を貰ったことには必ず意味があるはずなんだ…この命を託した意味が！」

渚「だからその意思は私が継ぐ！」

渚「この心臓に誓って！」

シャル「そう…好きにしたらいいわ」

シャル「でも」

シャル「マアムの意思は私が継ぐ」

唯「あの…」

唯「すいません、私がお二人をこの船に招待したことでこんなことに…」

君塚「いや斉川は悪くない…夏凪も悪かったな変なことに巻き込んで」

君塚「夏凪…？」

渚「うわああああ！！」

渚「ムカつく！！」

渚「何がおままごとよ！！」

渚「私がどんな思いで…」

君塚「気晴らしにプールでも行ったらどうだ？な？斉川」

唯「はい！ウォータースライダーだってありますよ！渚さんいきましょう！」

君塚「さて….」

シャル「うう….！」

シャル「なんで私だけ17連敗…？」

シャル「こんなの絶対おかしいわ….！」

シャル「もう一度よ！もう一度！」

君塚「何やってんだアホ」

シャル「誰？」

君塚「泣くまでギャンブルをやる馬鹿がどこにいる」

シャル「それで？何か用があって私を探してたんでしょ？」

君塚「ああ、さっきこの船に何かあるみたいなこと言ってなかったか？」

シャル「マアムの遺産よ」

君塚「シエスタの遺産？」

シャル「そう…マアムは死ぬ間際にスペースを打倒するための意思を、遺産を世界中に残していた」

シャル「そしてその1つがこの客船に眠っている…解析に時間はかかったけど確かな情報よ」

君塚「シエスタの遺産がこの船に…それとカジノに関係が？」

シャル「だって！」

シャル「マアムの遺産っていうくらいだから」

シャル「カジノで勝ち続けてたらなんかこう」

シャル「景品みたいな感じで出てくるのかなって」

君塚「ああ…やっぱちゃんと馬鹿なんだな…」

シャル「ちゃんと馬鹿ってなによ！」

シャル「まあ、マアムの意思を継ぐ気がないあなたには今更関係のないことでしょうけど」

君塚「悪かったな心配かけて」

シャル「で？どうしてマアムに代わって探偵になろうとしなかったの？」

君塚「あいついは…シエスタは俺に言ったんだ4年前のあの日」

シエスタ「君、私の助手になってよ」

君塚「だから俺は探偵にはなれない…これから先何があっても」

君塚「俺は名探偵の助手であり続ける…あいつの為に生き続ける」

シャル「馬鹿ね…」

シャル「本当はマアムに縛られてるの私じゃなくてあなたじゃない」

シャル「まあいいわ」

シャル「私は私のやり方でやらせてもらうから」

シャル「だから…あなたはあなたのやり方で」

シャル「マアムの遺産を…自分の答えを見つけなさい」

君塚「まあ今くらいははめを外したっていいだろう」

君塚「はぁ….」

君塚（結局手掛かりは何も見つからなかったな…）

渚「なんか変な気分」

君塚「何が？」

渚「こうやって君塚と向かい合ってご飯たべてること」

君塚「仕方ないだろ…斉川は主賓で挨拶周りがあるって、俺とじゃ不満か？」

渚「そんなこと言ってないでしょ！」

渚「君塚、今日一緒にプール来ないで何してたの？」

君塚「それは…」

渚「折角新しい水着買ったのに」

君塚「何！？」

渚「別に！」

君塚「夏凪、この後時間あるか？」

渚「え？いや…まあ」

君塚「だったら少し話たいことがあるんだが」

渚「話？話ならいま別にここでも」

君塚「ああ、ちょっとここじゃ話しづらい内容でな」

君塚「確か向かいにバーがあっただろ？1時間後にそこに来てもらえるか？」

渚「え？私1人で？」

渚「君塚と2人でバー？」

君塚「ああ、そうだ」

渚「まあ、いいけど…！」

渚「お待たせ」

君塚「わざわざ着替えたのか？」

渚「え？ああ、いや！シャワーを浴びた後着替える服がこれしかなくって！」

渚「で、その話って？」

渚「…思ってた話と違った」

渚「いや、まあこれは違うし…あくまで心臓の持ち主の影響だし…」

君塚「なにブツブツ呟いてんだ…？」

渚「え？何？」

君塚「え？なに急にキレてんの？」

渚「キレてないけど！」

君塚「いやキレてるだろ」

渚「キレてないって言ってるじゃん！！」

君塚「ぐあ…理不尽だ….！」

渚「でもそっか…思ったほど悪い人じゃないのねシャルさん」

君塚「ああ、純粋バカだよそれがあいつのいいところでもあるが」

渚「本当はわかってた…間違ってるのは私のほうだって」

渚「私はただこの心臓を貰って」

渚「彼女の意思を引き継いでるつもりになってるだけ」

君塚「でも夏凪はどうしてシエスタの後を継ごうと思ったんだ？」

渚「私…小さいころから体が悪かったからさ、鳥籠のようなあの病室から一生出られないと思ってた」

渚「きっと私はこのまま何者にもなれないんだって」

渚「それがすごく怖かった」

渚「でも新しい命を貰って私はあの鳥かごを飛び立つことになった…だけど」

渚「飛び方がわからなかったんだよ」

君塚「飛び方が？」

渚「だから私はこの心臓に頼った…彼女の生き方を私の生き方にしようって」

渚「そう思ったんだ」

君塚（そうか夏凪は）

君塚（シエスタに頼ることでしか生きられなかったんだ）

君塚（そしてそれは…俺も同じだ）

渚「ごめん、私先に休むね」

アナウンス「繰り返しご乗船の皆様にお伝えします」

船員「おい！このアナウンスは何だ？どこから流れている声なんだ？」

船員「無線室には誰もいませんでした！」

君塚「なんだ？」

アナウンス「おんなのこをお預かりしております」

アナウンス「おんなのこの名前はナツナギナギサ」

唯「君塚さん！！」

君塚「斉川？」

唯「夏凪さんが…！部屋を見て見たらどこにもいなくて！」

唯「じゃあ、シエスタさんの遺産というのがこの件に関係していると？」

君塚「ああ、その可能性がないとはいえない」

唯「夏凪さんは？」

船員「斉川様！」

船員「残念ですが発見には至らず…」

船員「しかし、こんなものが」

唯「君塚さん！これ！」

君塚「午後8時に名探偵の遺産を持ってメインデッキに来い」

唯「やっぱりスペースでしょうか？」

君塚「名探偵の遺産がお目当てだとすれば状況証拠は十分だな」

君塚「だが生憎それが何なのかわからないんだよな」

唯「であれば….」

君塚「シエスタの遺産ではなく夏凪本人を探すしかない」

君塚「ここもダメか…」

唯「左目を使っていますし見落としはないはずですけど…」

君塚「そうだよな…」

唯「手を握れる」

唯「肩も回る…呼吸はリズム」

唯「一度目を閉じ深く息を吸い込む、吐き出す」

唯「目を開くと濁っていた視界がクリアに写る」

君塚「なんだそれ？」

唯「ライブ前、緊張で張り裂けそうな心を落ち着けるおまじないみたいなものです」

君塚「悪いな面倒かけて…情けないよな」

唯「情けない？君塚さんが？」

君塚「情けないだろみっともなく取り乱して」

唯「面白いことをいいいますね」

唯「そもそも私は最初からそこまで君塚さんに期待はしていません」

君塚「もしかして俺は今めちゃくちゃディスられてるのか？」

唯「もう…違いますよ」

唯「私も同じだったんですよ」

唯「私も君塚さんと同じ1人じゃ生きていけない人間だったんです」

唯「両親を亡くして人生の指標を見失った私は過去の約束だけに囚われていて」

唯「その結果取り返しのつかないことをしようとしていました」

君塚「斉川…」

唯「でも、そんな私を助けてくれたのはこともあろうか私と同じ状況の君塚さんであるいは渚さんでした」

唯「そんな2人が私を救おうと前を向こうと言ってくれた…だから私は迷わずその手を取ることができたんです」

唯「だから申し訳ないんですけど私は必要以上に君塚さんに期待はしません」

唯「ですから、君塚さんも私に必要以上に気を使わないでください」

唯「だって、私達はそういう仲間なんですよね！」

君塚「ああ、それでいい…それがいい…」

唯「君塚さんが名探偵の助手なら私はそのまた助手なのかもしれませんね」

君塚「名探偵の助手の助手…」

唯「ええ、そうです！なんだかマトリョーシカみたいな構造ですが」

唯「君塚さんの右腕になれるかわかりませんけど左目くらいにはなれると思いますから」

君塚「ああ、それは頼もしい」

君塚「結局ここまで何も見つけられなかったな…」

唯「でも君塚さん！」

君塚「ああ、何も見つけられなかったという成果は得られた」

君塚「敵は斉川の左目でも見つけられないということ」

唯「何か心当たりが？」

君塚「ああ…ここから先は推理も駆け引きも何もいらない」

君塚「全面戦争だ…馬鹿野郎！」

君塚「回りくどい真似はもうたくさんだ」

君塚「とっとと出て来いよカメレオン！夏凪渚は返してもらうぞ」

カメレオン「よく気づきましたね」

君塚「夏凪！！」

カメレオン「おっと」

カメレオン「そこを動かないで貰えますかね？」

君塚「お前の目的は何だ？」

カメレオン「目的なら事前にお伝えしたつもりですが？」

君塚「その遺産とやらを渡したいのだが生憎俺たちにも心当たりがなくてな」

君塚「大人しく夏凪を返してもらえないか？」

カメレオン「困りましたね」

渚「きゃっ！！」

カメレオン「それではまるで取引になってない」

君塚「やめろ！カメレオン！」

渚「君塚….」

君塚「夏凪！！」

渚「あはは…私やらかしちゃったみたいだね…ごめん」

カメレオン「いいでしょう」

カメレオン「ではこの少女の命と」

カメレオン「今必死に避難させようとしている乗客たちの命」

カメレオン「そのどちらかを選ばせて差し上げましょう」

君塚「そんなことしてなんの意味がある？」

カメレオン「まあ…ついでのようなものです」

君塚「ついでだと？」

カメレオン「ええ、名探偵の遺産が見つからないのなら」

カメレオン「この船ごと沈めてしまえばいい」

君塚「じゃあ夏凪は？彼女の命を奪ってどんな利点がある？」

カメレオン「至極簡単な話ですよ」

カメレオン「この少女は名探偵の血を内蔵しているからです」

カメレオン「さあ、では選んでくださいこの少女の命か」

カメレオン「乗客の命か」

渚「君塚….」

渚「私を売って」

君塚「何を言ってる夏凪！」

渚「私を売って乗客の命を救うのが今求められてる答えでしょ」

君塚「そんな理知的な考え方お前らしくもない」

渚「そうかな….そうかも…でも今この状況で必要なのは私の激情じゃなくて名探偵の理性だよ」

君塚「お前だって名探偵だろ！」

渚「違うよ、私は何者でもない」

渚「君塚…」

渚「誰かの代わりにならなくていいってそういってくれたこと嬉しかった…」

渚「ありがとう」

君塚「そんな正しさならいらないな」

君塚「自分は何者でもないって」

君塚「まだ何者でもないってこれから何者でもなれるはずだ」

君塚「飛び方を知らないなら誰かに飛び方を教わればいい」

君塚「生き方を知らないなら誰かに並んで歩けばいい」

カメレオン「そろそろ答えは決まりましたか？」

君塚「ああ、答えは最初から決まっている」

君塚「夏凪渚は俺より先に死ねないことになっている」

君塚「悪いがそういう約束だ」

バァン！（銃声）