【感想】アニメ『86 エイティシックス』 7話 スピアヘッド部隊の真実が明らかに 花火の儚さが彼らの短い人生に重なる

＜OP＞

兵士「第１戦区 第１防衛戦隊 スピアヘッドへの補給物資……？」

兵士「少佐、このコンテナの中身は何でしょうか？」

レーナ「と、特殊弾頭です…」

兵士「…本当は、何なんですか？」

兵士「！」

レーナ「特殊弾頭…です…！」

レーナ「はぁ…」

兵士「もうちょっと…もうちょっと右。はい、ストップ！」

レーナ「わぁっ！？」

兵士「おつかれさまでーす」

兵士「少佐も一緒にいかがですかー？」

レーナ「…」

レーナ「はぁ…」

レーナ「認証開始。ヴラディレーナ・ミリーゼ少佐。東部方面軍第１戦区 第１防衛戦隊 指揮管制官」

レーナ「パラレイド、アクティベート。同調対象 スピアヘッド プロセッサー」

市民「おおおおお！」

女「すごーい！」

クレナ『そんなにキツイのなら辞めればいいのに…』

クレナ『こっちはアンタなんかいなくたって困らないし、別に管制してないからって何かあるわけでもないんでしょ？』

レーナ「ククミラ少尉…」

クレナ『居もしないくせに戦闘中にキツそうにされてると、気が散って邪魔』

レーナ「貴方や皆さんは、辛くはないのですか…？」

レーナ「あの声…」

レーナ「…」

子供「痛いー！」

子供「お母さーん！」

女「気を付けてー？しょうがない子ねぇ」

レーナ「…」

クレナ『シンがいなくたって、どうせ断末魔の悲鳴なんてプロセッサーならいくらでも聞いてるから』

クレナ『機体ごと爆散して即死するのは、死に方として上等…』

クレナ『手足吹っ飛ばされて、顔が削れて無くなって、体中焼けただれて、お腹が裂けて内臓がはみ出て…』

レーナ「うっ…」

クレナ『痛い苦しいって泣き叫んで仲間が死ぬのなんて、皆何度も見てる…。とっくに死んた奴の声なんて、別にそれに比べれば大したことじゃない』

レーナ「…ッ」

クレナ『誰が死んだって、私達にはもう何もおかしいことじゃない…』

レーナ「戦隊各員、お疲れ様です」

ライデン『感度良好だ、少佐。野郎ばっかでむさ苦しくてすまねぇな』

レーナ「シュガ中尉…。あの…ノウゼン大尉はどうしましたか？まさか今日の戦闘で何か…」

ライデン『ああ…。いや寝てるだけだ。疲れたってよ』

レーナ「そう…ですか…」

ライデン『前からたまにあってな。俺には…俺たちには、ホントのところはわからねぇが、やっぱしんどいんじゃねぇかな？四六時中ってのは…』

レーナ「レギオンの声のせいで…」

セオ『そんな事、アンタが気にしても仕方ないでしょ？こんな所にいれば、そういう時だってあるってことだよ』

レーナ「大尉もそうですが、やはり各員の負担が増えていますね。こうも立て続けに戦死者が出てしまっては…」

ライデン『ああ…』

レーナ「欠員の補充は、私が着任してからまだ１度も実現していません。補充を急がせます。こちらに最優先で人員を送る様、手を尽くしますから」

ライデン『…』

レーナ「シュガ中尉…？」

ライデン『ああ、そうだな…』

レーナ「この隊は、最重要拠点の防衛戦力です。優先的に補充を受ける権利があります」

レーナ「それまでは、周りの他の隊にも応援を要請しますから。だからどうか、もう少しだけ耐えて下さい」

ライデン『ああ…』

セオ『まあ、よろしく』

レーナ「はい」

ジェローム「それで…立場も弁えず、私のところへ直談判かね？ミリーゼ少佐」

レーナ「准将。スピアヘッド戦隊への人員補充の件ですが、もうこれ以上待てません。私は彼らの力になるためなら、どんな手も使います。例えそれが、叔父様の力にすがるようなことだったとしてもです」

レーナ「各部署に書類を回していますが、一向に…」

ジェローム「東部戦線への補給計画及び、プロセッサーの補充は既に決まっている」

レーナ「え…？」

ジェローム「君の要望についても、私から伝えてある。まだ内々のことだから知らないだろうが…」

レーナ「本当ですか？補給がやっと…」

ジェローム「だから君も、君の責務をしっかりと果たしたまえ。革命祭のパーティー、準備は出来ているのかね？」

レーナ「あ…」

ジェローム「ドレスを着てパーティーに出席する。ミリーゼ家の令嬢には、それこそが大事な仕事ではないのかね？」

レーナ「…わかりました」

アネット「レーナ…あんたね…」

アネット「何だって一体、そんなドレスなんか…。そんな真っ黒いのまるで喪服じゃない…」

レーナ「素敵でしょ？おかげで誰も話しかけてこないわ」

アネット「このパーティが退屈で下らない事には同意するけど、だからってオシャレするのは悪い事じゃないのに…」

レーナ「それなら私にはこれで十分だわ」

アネット「そういう事じゃ…」

アネット「うわっ…」

レーナ「どうしたの？」

アネット「向こうに新作のおやつを送りつけた婚約者がいるの。またね、レーナ」

シン『少佐』

レーナ「ノウゼン大尉、どうかしたのですか？まさかレギオンが…？」

シン『いえ。いつもの時間に同調がなかったので、こちらから繋ぎましたが問題ないでしょうか？都合が悪いようなら後日にしますが…』

レーナ「はぁ…。大丈夫です」

レーナ「すみません、いつもは皆さんと話している時間でしたね。どうしましたか？」

シン『特殊弾頭が届いたのでそのご連絡を』

レーナ「え…？あっ、無事届きましたか」

シン『ええ。花火、ありがとうございました』

レーナ「革命祭ですから。昔、お兄様とご両親と見たのでしょう？きっと他の皆も、それぞれに…」

シン『革命祭の伝統でしたか…。そちらでも見えていますか？リューネ宮殿の花火は』

レーナ「ええと…。見えます。でも、やっぱり空が明るすぎますね」

レーナ「そちらの花火は、綺麗でしょうね。夜は暗くて、きっと空気も綺麗でしょうから…。私も一緒に見た…」

レーナ「…」

レーナ「いつか皆で第１区の花火も見ましょう。きっと笑っちゃいますよ？」

シン『フッ、そんなに酷かった覚えはありませんが』

レーナ「じゃあ確かめてみて下さい。戦争が終わったら、除隊したら、皆で一緒に」

シン『…』

レーナ「イルマ少尉たちにも、見てもらいたかったですけど…。すみません、またタイミングが悪かったですね」

シン『いえ。情報があるのは初めてですし、ダイヤたちは喜んでいると思いますよ。アイツらは湿っぽいのは嫌いでしたから』

レーナ「そうですか…」

シン『それに、アンジュが先程ようやく泣けましたから。彼女はいつまでも一人で抱え込んでしまうたちなので…。その意味でもありがたかったです』

レーナ「エマ准尉は、忘れないのでしょうね…」

シン『それは皆、同じです。少佐も忘れずにいてくれたでしょう？兄の事を』

シン『嬉しかったですよ。俺は、兄さんを覚えてはいられませんでしたから』

レーナ「ノウゼン大尉…」

シン『少佐は俺たちの事を、忘れないでいてくれますか？』

レーナ「…！！」

レーナ「当たり前です」

レーナ「でも…」

レーナ「その前に死なせません…」

レーナ「もうこれ以上…、誰も…」

兵士「おい、エイティシックス。こっちもだ」

兵士「お前らのご主人様からプレゼントだとさ。…ったく、豚ごときが人間様に手間かけさせやがって…。どんな手を使っておねだりしたんだぁ？」

兵士「ったく、こっちは革命祭の準備で忙しいのによぉ」

ハルト「なになに～？」

ライデン「どうしたシン？お、何だこれ」

セオ「花火？こんなにいっぱい」

ハルト「えっ、少佐から！？すげー！！」

クレナ「ねえ、アンジュ。あのさ…」

アンジュ「なぁに？」

クレナ「あの女に、もういい加減話さなくていいのかなって…。とうとう何かプレゼントとか送って来てるし…」

アンジュ「少佐が心配？」

クレナ「えっ、違うってば！何であんな女なんか…」

クレナ「ただその…アイツはシンの事怖がらなかったから…。それぐらいはしてやってもいいかなって…。それだけよ」

アンジュ「ふーん…？」

クレナ「シンもライデンも、皆黙ってるでしょ？あのこと…。言ってやったら、もう繋いでなんかこないだろうし、お互いその方がいいんじゃないかって…」

アンジュ「そうね…。いつだったかカイエちゃんも、そう言ってたもんね」

クレナ「悪い人じゃないから、関わらない方がいい」

アンジュ「シンくんもライデンくんも、だから言い出せないんじゃないかって思うの。多分言っても傷つくだろうって、そう考えたんだと思うわ」

クレナ「アンジュ、いいの…？」

アンジュ「何が？」

クレナ「だって、これまで誰とも一緒にシャワー浴びなかったのに…」

アンジュ「うん、流石にもういいかなーって。二人しかいないのに、隠すこともないかなって…」

アンジュ「ダイヤくんね、最初に会った時に髪綺麗だなって褒めてくれたの。隠そうとして伸ばしてるんだってわかってるのに、綺麗な髪だから伸ばしててるのかって、そう言ってくれたの」

アンジュ「そのダイヤくんももういないんだから、これ以上気にしたって仕方ないかなって」

アンジュ「クレナちゃんこそ、いいの？伝えなくて…」

クレナ「…ッ」

クレナ「うん…。多分、私にはそれを言う資格は無いと思うから…」

クレナ「たとえ死んでも、連れて行ってもらえる…」

クレナ「私達だけの死神に…」

クレナ（私はきっと連れて行ってもらえる…）

クレナ（だけど…）

クレナ（でも、それならシンは…？シンの心は誰が…預かってくれるの…？）

レーナ『アンダーテイカー、報告を』

シン「戦隊各員、これよりレギオンの前進拠点の制圧にかかる…」

シン「忘れるな、拠点は囮だ。周辺の伏兵の動きに注意。潜伏場所から連れ出したら、第４小隊以下第２班が攻撃を」

レーナ『解析でました！発射位置、東北東１２０ｋｍ。推定射速は…』

レーナ『秒速４０００ｍ…！？』

レーナ『今まで確認された事のない超長距離砲の攻撃です！』

シン「…ッ！！！」

シン「…」

レーナ『作戦中止、撤退して下さい！撤退して下さい！』

シン「了解…」

ライデン「どうやら追撃は振り切ったみたいだな」

レーナ『い、今すぐ補充を急がせます…っ！今日にでもすぐに…っ！！』

シン「少佐」

レーナ『だって、こんなおかしい…っ！准将だって、人員の補充計画は決定していると…』

シン「ミリーゼ少佐っ！」

レーナ『っ！？』

シン「総員、構わないな？」

ライデン「……ああ」

レーナ『な…何を…』

シン「少佐、もういいです。貴方が何をしても、もうどうにもならない」

レーナ『ノウゼン大尉…それはどういうっ…』

シン「補充は来ない。ただ一人も。決して」

レーナ『え…？』

シン「俺たちは全滅します。この部隊は、そのための処刑場です」

レーナ『な、何を言って…』

アンジュ「少佐が言ってる補充ってね、私たちの次のプロセッサーのことよ」

ハルト「俺たちが死んだ後のね。この前、新品のジャガーノートが届いてたけどさ、あれもそいつら用」

レーナ「は…？」

ライデン「白豚どもは、エイティシックスを８６区から出すつもりなんざ、鼻っからねぇんだよ」

セオ「除隊までの5年…戦いきったら自由ってのを餌にして徴兵して、使い潰すだけ使い潰しておいてね。ほんっと豚。最悪だよね」

レーナ『そんな…そんな事あるわけが…！』

ライデン「プロセッサーの大半は除隊までに戦死するから、その先の話なんぞ反故にしてもそれは問題ねぇ。問題なのは、死ななきゃおかしい戦場で何年も生き残っちまう俺たちみたいな奴らだ」

セオ「生き残った分、頭も回るし、他のエイティシックスからしたら英雄でしょ？反乱の火種にでもなったら、困るからさ」

ハルト「だからそういう奴らは、各戦線の激戦区を転戦させられるんだ。そこで戦死するように…。で、それでも死なない始末に負えない奴が最後に行きつく場所がここ…。第１戦区第１部隊 スピアヘッド」

ライデン「戦隊員を全滅するまで戦わせるのがこの隊の目的、ここが俺たちの最後の任地だ。俺たちは全員、ここで死ぬ」

セオ「全滅してやっと補充が来るってわけ。次の、処刑待ちの連中がね」

レーナ『守らせるためではなく、死なせるために戦わせるなんて…。そんなもの虐殺ではありませんか…！』

レーナ『皆さんは知って…』

アンジュ「ええ…、ごめんなさい」

レーナ『いつ…から…？』

クレナ「最初からよ。戦場に行った人は、私のお姉ちゃんも誰もかれも皆帰ってこなくて、私たちも収容所から出られなかった。白豚が約束を守事なんてないって、皆最初からわかってた」

レーナ『それがわかっていて、何故戦ったのですか！？逃げようと、それこそ共和国に復讐しようとは思わなかったのですか！？』

ライデン「復讐ってはそう難しい話じゃない。戦わずにレギオンどもを素通りさせてやればいい。俺たちも当然死ぬが、それで白豚共を道連れにしてやれる」

レーナ「なら、どうして…」

ライデン「俺は１２まで第９区のアルバのババアに匿われてた」

レーナ『え？』

ライデン「シンを育てたのは、立ち退き拒否して強制収容所に残ったアルバの神父で…。セオの隊長の話は、前にセオがしたな」

ライデン「クレナはアルバの中でも、最悪の屑を知ってる。もちろん白豚共の屑っぷりは、全員身に染みてるが…」

ライデン「肌の色が違うからって、エイティシックスから迫害されたカイエみたいな奴もいる…」

レーナ『…っ！』

ライデン「白豚や帝国の血を引いたアンジュやハルトやシンは、それは同じだ」

ライデン「エイティシックスにだってそういう屑はいて、それ以上に最後まで戦い抜いて死んでいった誇り高いエイティシックスは大勢いた」

ライデン「アルバだって大半は屑でも、わざわざ死なせる事はねぇって奴もいたし、エイティシックスも善人ばかりってわけじゃねぇ…」

ライデン「それを踏まえて、俺たちは決めた。そのどちらでありたいかってな」

ライデン「屑に屑な真似をされたからって、同じ真似で返したら同じ屑だ。ここでレギオンと戦って死ぬか、諦めて死ぬしか道がねぇなら、死ぬ時まで戦い切って生き抜いてやる。それが俺たちの戦う理由で、誇りだ」

ライデン「その結果として、白豚共を守っちまうのは癪に障るが、まあ構わねぇさ」

レーナ『その果てに、死ぬしかないとわかっていても…ですか？』

ライデン「明日死ぬからって、今日首くくるマヌケがいるかよ」

ライデン「死刑台に登るのは決まってても、登り方は選べるだろってそういう話だ。俺たちは選んで決めた。後はその通り生き延びるだけだ」

＜ＥＤ＞