【感想】 無能なナナ 11話 フウコが怪しすぎる…　そして毎回引きが絶妙だ！

ナナ「私以外に殺人犯がいる。というのか…」

キョウヤ「さて、殺されたのは石井リュウジ。柊たちが来る前に調べたが、喉を切り裂かれ、背中にも刃物か何かで刺されたような傷跡があった」

キョウヤ「ところでモグオは、昨夜何をしていた？」

モグオ「ああ？俺？」

キョウヤ「この殺害現場の隣が、お前さんの部屋だろう？何か気づかなかったか？」

モグオ「昨日の夜は、こいつらと一緒にいたよ」

子分Ｂ「俺ら三人、モグオさんに気合い入れてもらってました！」

キョウヤ「気合い？俺の説教をこいつらに聞かせてやってたんだよ」

子分Ａ「葬式が終わってからずっと…」

子分Ｂ「５時間くらい…」

子分Ｃ「全員正座で聞いてました…」

ミチル「噂に聞く…」

ミチル「モグオさんリサイタルですか…」

キョウヤ「説教に夢中で、隣の部屋で起こった惨殺事件なんて知らなかったと？」

モグオ「す、すまねぇ…」

キョウヤ「お前らどうだ？隣から何か聞こえなかったか？」

子分Ａ「いやぁ…うーん…」

子分Ｂ「半分寝てたんで…」

モグオ「なっ！」

子分Ｃ「自分は逆に、モグオさんの話を真面目に聞き入ってたんで！」

キョウヤ（すると、石井リュウジが殺されたのは、モグオの説教が終わった後か…？）

キョウヤ「お前ら３人の能力は？」

モグオ「ちょっ、待てよ！」

モグオ「こいつらを疑おうってのか？」

キョウヤ「お前ら４人が口裏を合わせて、アリバイを作ってる可能性はある」

モグオ「テメェ…！」

ナナ「モグオさんっ…！」

ナナ「キョウヤさんがこうなったら、好きなように納得してもらう他ありません！」

モグオ「ナナちゃんがそう言うなら…」

子分Ｂ「じゃあ俺から」

子分Ｂ「はぁ…」

子分Ｂ「私、柊ナナ！モグオさんってステキ！」【ナナの声】

ナナ「ぇ…」

キョウヤ「ぉ…？」

モグオ「おい、恥ずかしいじゃねえか」

子分Ｂ「モグオさんってステキー！」【ナナの声】

キョウヤ「…」

子分Ｂ「いやぁ、この能力一度発動したら、同じこと繰り返さないと治まらないんで」

キョウヤ「確かに柊の声だ」

キョウヤ「ちなみに、被害者の石井の声を真似る事も出来るんだな？」

子分Ｂ「えっ、ああ…」

キョウヤ「よし、次はお前だ」

子分Ｃ「お、お、俺っすか？」

子分Ｃ「すいません…。あんな死体見たせいか、さっきからお腹痛いんすけど…」

キョウヤ「いいから、やれ」

子分Ｃ「ちょ、ま…。ちょっと待って…！」

キョウヤ「お、おい…」

キョウヤ「大丈夫か？」

＜トイレの流れる音＞

ナナ「！」

ミチル「お手洗いに、誰かいるんですかね…？」

子分Ｃ「すいません…、今の自分っす…」

モグオ「こいつはな、幽体離脱出来るんだよ」

子分Ｃ「自分テンパると魂抜けちゃうんすけど、とりあえずトイレで出すもの出そうと思ったら幽体だったわけで…。出るもんも出ないわけで…」

子分Ｃ「つーか、リアル生身でトイレに行っていいすかー！？」

モグオ「おい、もういいだろ？こいつ胃腸が弱いんだよ」

キョウヤ「わかった。次…」

子分Ａ「ふふっ…」

子分Ａ「目覚めよ…。磁力っ！！」

子分Ａ「ふふーん！」

ナナ「ええと…」

子分Ａ「俺は全身を磁石に出来るんだ」

ナナ「ああ…。例えば、遠くにある金属製品を引き寄せたり、反発させて飛ばしたり出来るんですか？」

子分Ａ「そういうカッコいいのは、今特訓中！」

キョウヤ「ナイフや包丁なんかも操れるって事だな？」

ナナ「そもそも石井さんが殺害されたのが、昨夜で間違いないんですか？」

キョウヤ「ああ」

キョウヤ「石井は昨晩、ユウカ達の葬式には顔を出していた」

キョウヤ「今朝になって、恋人が一緒に登校しようと迎えに来たところ、既に死んでいた…」

キョウヤ「そうだろ？」

キョウヤ「空野フウコ」

フウコ「申し遅れました。私、空野フウコと申します。亡くなられた石井リュウジさんとは、長年に渡ってお付き合いさせて頂いていました」

モグオ「いやぁ、知ってるけど…」

キョウヤ「今日から学校は休みになったはずだ。なのに、お前さんは迎えに来たのか？」

フウコ「毎日の習慣で御座いましたので…。つい…」

キョウヤ「能力を見せてもらおうか」

フウコ「え…。それは…」

キョウヤ「お前さんは死体の第一発見者だ。被害者との関係性も深かった。隠し事があると、余計な面倒を掛けるぞ？」

フウコ「では、せめてお外に参りましょう」

キョウヤ「ここじゃ使えない能力だとでも？」

フウコ「皆さんを巻き込む事になるかもしれませんので…」

フウコ「私の能力は、大気を操る攻撃的なものでして…」

キョウヤ「なら、俺に向けてやってみてくれ」

フウコ「そんなっ…！」

キョウヤ「例えバラバラにされても、俺は死なない」

フウコ「えっ…。ですが…」

キョウヤ「いいから」

ナナ「皆さん、離れていましょう」

フウコ「わ、わかりました…」

フウコ「では…」

フウコ「参りますっ！！」

フウコ「ふっ！！」

キョウヤ「ぐ…」

モグオ「ええええ…」

フウコ「あ…」

フウコ「小野寺さんっ…！」

フウコ「大丈夫ですかっ…！」

キョウヤ「ぅ…」

キョウヤ「工業用の…、ウォーターカッターの様なものと考えていいのか？」

キョウヤ「しかし、気体をあそこまで圧縮して飛ばせるとなると、わけがわからんな」

モグオ「お前も十分わけわかんねぇよ！」

キョウヤ「皆を巻き込むかもしれないと言っていた割には、かなり正確に狙いをつけれるんだな」

フウコ「空気の籠った室内では、上手く能力を使えない場合が多いのです。風通しの良い場所でないと…」

キョウヤ「風通し、ね…」

キョウヤ・ナナ（現場の窓は、開け放たれていたが…）

先生「おーい！小野寺くーん！」

先生「上の人と電話つながったよー！保留にしてあるから、急いで―！」

ナナ「電話？」

キョウヤ「緊急事態だろ？役人連中に抗議しようと思って、頼んでいたんだ」

ナナ「無駄な事を…」

キョウヤ「一旦解散だ」

ナナ「わかりました」

ナナ（石井リュウジは窓から逃げようとして、殺されたのか？）

ナナ（まだわからない事が多い）

ナナ（だが、空野フウコを詰めるのはキョウヤの仕事だ）

ミチル「…」

ナナ「どうしました？」

ミチル「あっ、いえ…」

ナナ「朝方も何やら難しい顔をしていましたが…」

ミチル「ナナしゃんは、どうしてお部屋を調べているんです？」

ナナ「人類の敵の痕跡を探そうとしてるんですよ」

ミチル「頑張ってますね…」

ナナ「…」

ナナ（様子がおかしい…）

ナナ（昨晩、部屋に泊めて何か知られてしまったか？）

ナナ（単純に体調を崩しているのか？あんな死体を見た後で、気分がわるくなったとか…）

ミチル「あの、ナナしゃん…」

ナナ「はい？」

ミチル「こんな時になんですが、ナナしゃんは学園を卒業して人類の敵を倒したら、どするんです？」

ナナ「首都圏の大学に進学しようかと…。ミチルちゃんは？」

ミチル「私は…、お医者さんになりたいなぁって…」

ミチル「私の能力は、病気や毒物なんかには無力でして」

ナナ「ほほう…」

ミチル「お父さんがお医者さんでして、傍でちょこちょこと勉強させて貰ってたんですが、やっぱりキチンと大学で学びたいなと…」

ナナ「応援します。早く人類の敵との戦いが、終わるといいですね」

ミチル「ありがとうございます。ナナしゃんにお話が出来てよかった…」

ナナ（気にしすぎか…。事件続きで将来が不安になったと言ったところだろう…）

ミチル「そうだ。もしよかったらですけど、卒業したら私の街に来ませんか？」

ナナ「私がですか？」

ミチル「うちは、学生さん向けの格安アパートを幾つか持ってまして、ナナしゃんも進学するならどうかなと…」

ミチル「なんだったら、私の実家に住んでもらっても構いませんよ！？」

ナナ「本気で言ってるんですか…？」

ミチル「私も、ナナしゃんが傍にいてくれたら心強いです！」

ナナ「いいですね。裕福で暖かい家庭の様で…」

ミチル「お父さんもお母さんも、とっても優しいです。ナナしゃんの事も、すぐに気に…」

ナナ「私の両親が殺された話を、したばっかりですよね？」

ナナ（何を感情を露わにしてしまったんだ…。私は…）

ナナ（しかし、ミチルの態度は妙だ…。急に将来の話をしたり、私を気遣い始めたり…）

ナナ（心理の裏を読むならば…。最悪の場合、私の犯行に気付き、それを直接言えないものだから、遠回しに諭そうとしている可能性もある…）

先生「柊くん、先生だよ！」

ナナ「はい」

先生「犬飼くんに頼まれてね…」

先生「前の制服、破けちゃったらしいじゃないか」

ナナ「ありがとうございま…」

ナナ（毒の小瓶…っ！）

ナナ（橘を殺そうと使った毒がない…！その後、ポケットに入れておいたはずなのに…。いつの間にか…）

ナナ（ミチルだ…）

ナナ（私を介抱して、着替えさせた時に気付いた）

ナナ（高梨カオリが殺された後でもあるし、自分の能力が及ばず、医者を目指していると言うのなら、毒物に関心を払っていたとしてもおかしくはない）

ナナ（くそっ…。もしあれがキョウヤの手に渡ったりでもしたら…っ）

キョウヤ「おう、柊…」

キョウヤ「今さっき、犬飼が部屋に来たんだがな…」

キョウヤ「お前さん…」

キョウヤ「犬飼と喧嘩でもしたのか？」

ナナ「え…？」

キョウヤ「柊の事で何か相談があるようだったんだが、要領を得なくてな…。やっぱりいいですと言って出て行ったよ」

ナナ（私の犯行を、キョウヤに明かすかどうかまだ迷っているとでも…？）

キョウヤ「まあいい。これから空野フウコに会うんだが、一緒に来てくれ」

ナナ「はい…」

先生「そうだ、小野寺くん。君の抗議のおかげか、近々本土からお偉いさんが視察に来てくれるってさ」

キョウヤ「そうか。無理を聞いてくれてありがとう」

ナナ（お偉いさんだと…？）

ナナ（面倒な事になる前に、なるべく多く殺しておかなければ…）

キョウヤ「落ち込んでる所すまんが、お前さんは葬式が終わった後、何をしていたんだ？」

フウコ「えっ、こちらで読書を…」

フウコ「あっ…。ですが、深夜になってお友達がいらっしゃいまして、明け方近くまで一緒にいました」

キョウヤ「正確には何時ごろだ？」

フウコ「１２時前だったかと…」

キョウヤ「ちなみに、石井リュウジは早寝早起きの習慣があったか？」

キョウヤ「部屋にあった目覚ましが、５時にセットされていてな」

フウコ「はい。リュウジさん、最近はダイエットの為に毎朝ジョギングをしていたそうです」

フウコ「いつも遅くても、１１時には就寝なさっているかと…」

キョウヤ「聞いた風に話すのは何故だ？付き合っていたんだろう？」

フウコ「その…。最近は疎遠になっておりました。倦怠期と言うのでしょうか…。幼馴染で、小さい頃からずっと一緒でしたから…」

キョウヤ「石井は、ギャグが得意な人気者だったらしいな？氷使いのアイツよりも、よほどモテたらしいじゃないか」

キョウヤ「まあ、わかった。昨晩の夜中には、友達と会っていたんだな？裏は取らせてもらうぞ」

ナナ「すみません…。私は信じてますから…」

フウコ「柊さん、お願いします…」

フウコ「どうかリュウジさんの敵を…。人類の敵を…、倒しましょうね…」

キョウヤ「空野は、嘘を付いていたか？」

ナナ「え？」

キョウヤ「何の為にお前さんを連れて行ったと思ってる？」

ナナ「ええと…」

ナナ（下手な事は言えないな…）

ナナ「すみません、意識を集中してませんでした。でも、空野さんに犯行は無理ですよね？」

キョウヤ「なぜ？」

ナナ「まず、だいたい７時にお葬式が終わりましたよね？」

ナナ「その後、被害者の石井さんの隣で、モグオさんがお説教大会が始まりました」

ナナ「それは５時間ほど続いたそうですが、その間に犯行があったのであれば、誰かが隣の異変に気付いたでしょう…」

ナナ「すると犯行は、説教が終わった深夜１２時以降に行われたという事になります」

ナナ「ですが、その時間から明け方まで、空野さんはお友達を部屋に招いていたそうです。彼女には、アリバイがあるという事になりませんか？」

キョウヤ「石井が殺されたのは、恐らくモグオリサイタルの最中だ」

ナナ「え…？」

キョウヤ「殺害現場の物陰には、灯りに誘われた虫が隠れていた」

ナナ（気づいていたか…）

キョウヤ「死体が発見された朝方、部屋の窓は開いていたし、電気もつけっぱなしだった。では、昨夜の何時頃からその状態だったのか」

キョウヤ「空野の話によれば、石井は１１時には寝るらしい」

キョウヤ「虫嫌いだったとも聞いたが、そうじゃなくても普通は寝る前に窓は閉めて、電気は消すだろ」

ナナ「だから、起きてる時に殺害されたのだと？なら、窓が開いていたのは…」

キョウヤ「犯人が能力の都合で開けたとかな」

ナナ「１２時以降、何者かが忍び込んだ可能性は？」

キョウヤ「寝込みを襲って、わざわざ部屋の電気をつける理由がわからんだろ」

ナナ「目を覚ました石井さんと犯人が戦いになって、その過程で明りを付けたのかも…」

ナナ「そして、石井さんは窓から逃げようとした…」

キョウヤ「石井は、自分の体をどこまでも小さく出来たようだ」

キョウヤ「こんな話を聞いた。以前、冗談が過ぎたらしく、石井が空野を怒らせた」

キョウヤ「空野は、学校中を駈けずり回って追いかけたが、捕まえられなかった」

キョウヤ「やがて石井は、くたくたになった空野のポケットから、ひょっこりで出来て…」

リュウジ『ゴメン…！』

ナナ「そんな能力だったんですね」

キョウヤ「やろうと思えば、毛穴の中に入れるサイズまでなれたらしい」

キョウヤ「襲撃者を察知出来たのなら、窓から逃げるよりも先にやることがあったんじゃないか？それに、犯人は石井と正々堂々バトルする必要ないだろ」

キョウヤ「コンタクトレンズのケースに、毒を混ぜておけばいいんだ」

キョウヤ「逆に言えば、そういった不意打ちでしか石井を殺すのは難しい。恋人だった空野には、その機会を作れたはずだ」

ナナ「空野さんを疑っているんですね？」

キョウヤ「能力を使うところを見ただろう？部屋が荒れていた説明になりそうじゃないか？」

ナナ「でも、その時間と隣の…」

キョウヤ「遺体を見るに、石井は真っ先に喉を切り裂かれていた。声を上げさせないためだろう」

キョウヤ「犯人が物音に注意を払っていたのは明白だ」

キョウヤ「ボンクラ４人組は、隣の部屋の異変に気付かなかっただけかもしれない」

ナナ（予想以上に事件を紐解いているな…）

ナナ（これはもう時間の問題か…？）

キョウヤ「んじゃな。俺の方は動機がわかったら、もう一度空野を詰める」

ナナ「どうか穏便にお願いしますね！」

ナナ（私はミチルを詰めるとするか…）

ナナ「ミチルちゃん？」

ナナ「入りますね？」

ナナ（ミチルは風呂か…）

ナナ（部屋を調べさせてもらうとしよう）

ナナ（もし見つかったら、その時はその時だ）

ナナ（無いな…）

ナナ（どこに隠した？）

ナナ（直接問いただしてやってもいいくらいだ。朝からミチルはおかしかった）

ナナ（キョウヤに何を告げ口しに行こうとした？）

ナナ（日記か…？）

ナナ（そう言えば、橘にやられた朝方も何か書いていたな）

ミチル『ナナしゃんに謝って下さい！私はナナしゃんの力になりたいんです！』

ナナ「…」

ナナ（ミチルの事だから、あのことも馬鹿正直に書いているに決まっている…）

ナナ（見る者がみれば、これは私の犯行を暴く証拠になりかねない…）

ミチル『ナナしゃんが助けてくれた。なんて勇気のある人なんだろう』

ミチル『ナナしゃんと二人だけの秘密ができた』

ミチル『嬉しいな。信頼してもらってるのかな？』

ナナ「…っ」

ミチル『そういえばナナしゃんの事、私全然知らないな。もっと力になりたいな』

ミチル『ちょっと怖いけど、色々聞いてみようかな？』

ミチル『そうだ、そろそろ船の定期便が来るから、何かプレゼントしたいな。何がいいかな～』

ミチル『どうしたら喜んでくれるかな…』

ジン「お探し物はこれかね？ミチルちゃんを疑うなんて、あんまりじゃないか…」

ジン「どうかね？ミチルちゃんの信頼に満ち溢れた日記を読んだ感想は？」

ナナ「貴方は何がしたいんですか…？」

ジン「君を殺人鬼に仕立て上げているであろう誰かを、ランチに誘いたいだけだよ」

ナナ「キョウヤに渡したりしないんですね」

ジン「麻薬捜査官はよく現場の刑事ともめると言う」

ジン「言っただろ？しばらく君を泳がせてあげると」

ジン「さて、昨夜の殺人事件以来、森の動物たちがちょっと騒がしくてね」

ジン「しばらく会えなくなるが、君はミチルちゃんを大切にしてあげたまえ。彼女、随分とお風呂が長くないかね…？」

ナナ「…っ！」

ナナ「ミチルちゃん！？」

ナナ「…っ！！」

ナナ「ミチルちゃんっ！？」